chiritannyaaの日記

山に登ったときに思ったことを書き連ねる日記

10月12日 北岳DAY2

2日目

 

4時に起きて準備を始めます

この日のコースタイムは9時間ほど

コースタイム通りに歩けたとしても、休憩をはさみながらで大門沢小屋に着くまでには10時間ほどかかりそう

10月の半ばともなれば日の入りの時刻は日に日に早くなっていきます

宿泊予定の大門沢小屋には遅くとも16時までには着きたい

余裕を持っての出発、ということでテント場を出発する時刻は4時半を予定していました

朝、目を覚ましてから、テント内に広げられたシュラフやらマットやらをテキパキと片付けていきたいところですが、寒いし暗いしでなかなか思うようにははかどりません

結局、肩の小屋のテント場を出発できた時刻は、予定していた4時半を少し過ぎてしまいましたが、これはまあ想定の範囲内

暗闇の中、まずはテント場から肩の小屋まで登り上げます

テント場を見下ろしてみると、すでにほとんどのテントに明かりが灯っていました

さて、北岳の山頂方面に向かう登山道はどこを通るんだったっけな

と探そうとしていると

相方さんが、

俺覚えてる、こっちだったと思うよ

と先行してくれました

ふんふん、と後ろをついていったものの、建物の間を通り抜けたその先は行き止まり

 

あれ?

 

来た道を戻り、再びヘッドライトの明かりを頼りに登山道を探します

 

北岳

 

という印はテント場側の小屋の脇を通るようにつけられていました

いきなりの道間違い💦

気を取り直して北岳への登山道を登り始めます

 

この日の日の出の時刻は5時45分ごろ

肩の小屋から北岳の山頂までのコースタイムは30分ほど

北岳の山頂でご来光を見るためには5時ごろに肩の小屋を出発すれば間に合うので、この時間から歩き始めている人はあまり多くありません

登山道はゴツゴツとした岩の上を歩いていきます

暗闇の中、ヘッドライトを頼りに岩につけられたマーキングを探しながら登ります

15分ほど登ったところでマーキングを見失ってしまい、ルートロスト

一旦落ち着いてからマーキングを探します

おそらくトラバースするように進まなければならないところをうっかりと直登してしまったようです

暗闇の中にぼんやりと前方に浮かび上がるように見えていた黒い岩峰

これが北岳の山頂だと思い込んで、そのまま直登してしまっていたようです

目指す北岳の山頂はその奥

GPSと登山道を照らし合わせて無事に正規のルートに復帰しました

 

危ない危ない

その後はより慎重になりながら、ルートを確認して登っていきます

肩の小屋を出発してから30分ほど、無事に北岳の山頂に到着しました

日の出を山頂で見ようという人たちがもう既に何人か集まっています

日の出の時刻まではまだあと30分ほどあります

 

ここで日の出を待つか、先へ進むか

 

この日の行程はまだまだ長い

この先しばらくは稜線上を歩くはずなので、どこかのタイミングで日の出は見られるんじゃないか、

ということで先へと進むことにします

 

山頂から続く岩場を下り終えると、足場の不安定なガレ場の下りが待っていました

浮石で足を滑らせないように注意しながら下っていきます

八本歯のコルとの合流地点あたりで東の方角を見ると空が橙色に染まり始めています

時刻を確認すると、もう間もなく日の出の時刻

ここから先、登山道は西側の斜面につけられているようで、日の出が見えるかどうかが少々怪しい

日の出の時刻はもう間近

ここで日の出を待つことにします

 

場所はちょうど風が吹き抜ける場所

10月の標高3000mで吹く風はなかなかの冷たさ

動かずにじっと立っているとどんどん体が冷やされていきます

太陽はもう間もなく出てきそうなので、少しの間、この吹き付ける風と向かい合いながら日の出を待ちます

眼下には雲海が広がっていますが、上空には薄雲が立ち込めています

ちょうどその間に太陽が出てきました

雲海からの日の出

そして太陽はすぐに上層の雲の中へと入っていってしまいました

太陽が雲の中に隠れてしまったので、日の出の後でも辺りには薄暗さが続きます

日差しの暖かさはほとんどなく少し肌寒いくらい

再び北岳山荘を目指して歩き出します

 

北岳山荘がある標高は2900m程なので、北岳の山頂から北岳山荘までは、標高差で300m近くを下ることになります

後ろから来た身軽そうな人たちが軽快に尾根を下っていき、あっという間に見えなくなってしまいました

このあとしばらくしてからもう一度すれ違ったので、どうやら肩の小屋から間ノ岳までをピストンしてきた方々だったようです

一方、重い荷物を背負っている私たちはそんな軽快な足取りとは程遠く、一歩一歩ゆっくりと北岳山荘を目指して歩きます

北岳の山頂を出発してから1時間ほど経った頃、ようやく北岳山荘までやってきました

 

今シーズン、北岳山荘は改装工事中ということで小屋の宿泊営業はしていません

テント泊のみ受け付けているようで、ちょっとした売店と水場は設置されています

そんなわけで北岳山荘にはあまり人の気配がなく静かです

この日の行程では、北岳山荘から宿泊場所の大門沢小屋までは途中に水場はありません

ここで必要な分の水を補給していきます

稜線の水場ですが水の補給は無料とのこと

これは本当にありがたい

必要な量プラスαの水を補給します

重量がかさみますが、この先に水場がないことを考えると、少し余裕を持った水分量を確保しておきたい

重たくなったザックを再び背負い上げ、次のピークの中白根山を目指して歩き出します

 

北岳山荘から中白根山までは緩やかな登りが続きます

登山道脇の草紅葉がちょうど見頃で目を楽しませてくれます

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40分程で中白根山に到着しました

相変わらず空には薄雲が広がり、どんよりとしています

前日の晴れ具合と比べると少し残念なお天気ではありますが、そんな空模様の下でも中白根から振り返って見た北岳の姿は本当に格好いい

ついさっきまで、あそこの山頂に立っていて、そしてそこから今いるこの場所まで歩いてきたのかと思うと、なんだか不思議な感覚です

ただ、ここまではこの日の行程でまだまだ序盤

この先まだ3つのピークを越えていかなければなりません

中白根から見る北岳 中央アルプスには日が当たっています



白根山を通過し、次は間ノ岳を目指して歩きます

途中で目にした真っ赤になったウラシマツツジ

鮮やかでとっても華やかさがありました


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中白根を出てから間ノ岳までの登山道は、急登もなくのんびりとした稜線歩き

たまにザレたところもありますが、大半は気持ちのいい稜線歩きが続きます

少し進んでは後ろを振り返って北岳を眺める、

というのを何度も何度も繰り返しながら間ノ岳へ向けて進んでいきます
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登山道は少し東の方へまわりこんでいるようで、ちょうど北岳の東側の斜面を綺麗に見渡せる場所に出ました

奥には鳳凰三山も見えます

北岳の山肌に広がるダケカンバの黄葉がとても綺麗です

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谷筋の黄葉も綺麗
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振り返るたびに少しずつ見える山々が変わっていきます

甲斐駒ヶ岳の白い山頂部が北岳越しに見えるようになりました

南アルプスの広さを改めて実感します

 

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中白根を出発してから1時間ほど

間ノ岳の山頂部がようやく見えてきました

少し晴れ間も出始めて、なかなかの絶景です
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間ノ岳の山頂は広くなだらか

山頂からは甲斐駒ヶ岳仙丈ケ岳北岳、富士山などが見え、360度すばらしい眺望です

間ノ岳の山頂に着く頃には青空も見えてきました
間ノ岳の山頂は360度の大展望





3000m峰を繋ぐ天空の稜線

素晴らしい✨

写真などで見ていた一コマからはもう少しなだらかでのんびりと歩ける稜線をイメージしていましたが、実際は思っていたよりもアップダウンのある稜線歩きでした

気付けば富士山との距離感も近くなってきました

小さく見えていた塩見岳も少しずつ大きく見えるようになってきました

南アルプス縦走、どんどん楽しくなってきました

 


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間ノ岳へ登頂した後は、4つめのピーク、農鳥岳を目指して歩きます

まずは間ノ岳から農鳥小屋のある2800m付近まで下っていきます

間ノ岳の標高が3190mなので標高差で約400mほどの下り

北岳から北岳小屋へもなかなかの標高差を下りましたが、またまた同じような下りです

 

間ノ岳から農鳥岳方面に足を進めると、カラフルにマーキングがされた石が目につくようになりました

黄色と赤の2色を使ったマーキング

とってもカラフルで見つけやすい

太陽のマークとか、ちょっとポップな雰囲気のマーキングも増えてきて、マーキングを探すのもちょっと楽しくなってきました

10月の半ば、しかも平日となれば、それほど登山者の数も多くありません

ほとんどが間ノ岳までのピストンの登山者だったのか、農鳥岳方面に進む人の姿はありません

同じ肩の小屋でテント泊をしていて、北岳山荘辺りから同じようなペースで進んでいたソロの男性が、ちょうど同じくらいのタイミングで農鳥岳方面に進んだ以外には他には誰もいませんでした

静かな山歩きです

 

農鳥小屋への下りは浮石の多いザレた登山道が続きます

足元に注意を払いながら進みます

 


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眼下に農鳥小屋の赤い屋根が見えていますが、これがなかなか近づいてきません

農鳥小屋の向こう側には西農鳥岳へと続く急峻な尾根が見えます

そこにつけられた登山道は見るからに急登

この後あそこを歩くのかと思うとまだまだ気が抜けません


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先程まで見下ろしていた尾根が目線の高さほどになるまでに下ってきた先に、赤い屋根の農鳥小屋がありました
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農鳥小屋の一角の入り口の扉は開いており、そこからテレビの音のようなものが聞こえてきましたが、小屋が営業しているという雰囲気ではなさそうです

どうやら小屋はすでに営業を終了しているようです

小屋が営業していれば、農鳥小屋のオリジナル手ぬぐいを買いたかったんですが残念

小屋に入って手ぬぐいだけでも買えないのかな、

とも思いましたが、ここの小屋番さんの噂を聞いているととても小屋に入っていく勇気はありませんでした

 

小屋を通り過ぎた先に、少し広くなった場所があったのでそこで休憩をとることにします

農鳥小屋から見上げる西農鳥岳へと続く尾根の登山道は、やはりどう見ても急登です

この急登に備えて、しっかりとここでエネルギーを補給していきます

 

いよいよ西農鳥岳への登りに取り付きます

登り始めからやはり見た目どおりの急登

なかなかの傾斜を登っていきます

それに加えて足場はザレていて崩れやすい登山道

ところどころで四つん這いになりながら、しばらく続く急登を必死に登っていきます

途中で休もうにも、急すぎてアキレス腱は伸びっぱなし

今回の行程のなかで一番の急登なんじゃないか、

と思いながらひたすら登り続けていくと、ようやく少し傾斜が緩んできました

どうやら一番の急登箇所は終わりを迎えたようです

この先、登山道は岩場をトラバースするようにつけられており、ぐるりと回りこんでその先にある西農鳥岳の山頂へと続いていきます


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右手には長大な仙塩尾根が見えます

黄葉がとても綺麗
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仙塩尾根にある熊の平小屋が発見できました
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振り返ってみると、間ノ岳がものすごい存在感を放っています

北岳側から見るよりも、はるかに大きくてどっしりとした姿に見えます

さすがNo.3の山、です

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登山道の先に、目指す西農鳥岳の山頂標識が見えてきました

この辺りから見る周りの景色の雰囲気がとても良くて、写真を撮りながらのんびりと進みます
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4つ目のピーク、西農鳥岳へと到着しました

農鳥小屋からはなかなかタフな登りでしたが、無事に登頂できました

山頂からは北岳間ノ岳と今日ここまで来るのに越えてきた峰々が見渡せました
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次のピーク、農鳥岳のピークは西農鳥岳よりは少し低い標高でなだらかな尾根の上にあります

が、どうやらそこに辿り着くには少々岩場を越えていかなければならないんだとか


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西農鳥岳の山頂からはちょうど岩場の部分が隠れてしまっているのか、岩場らしきところが見あたりません

西農鳥岳を下り始めて隠れていた部分が見えるようになると、なるほど岩場をトラバースするように登山道が続いています

それほど難しい岩場ではありませんが、重たい荷物を背負ってここまで歩いてきた疲労もそろそろ蓄積されてきているはずなので油断は禁物

段差の大きな岩場をいくつか乗り越えながら慎重に岩場を通過していきます
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難所の岩場を越えると、農鳥岳までは草紅葉の綺麗な稜線を緩やかに登っていくだけです

この日の登りはこれで最後

達成感をかみしめながら登っていきます
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塩見岳へと続く仙塩尾根の黄葉が本当に綺麗です

手前の谷筋の黄葉と仙塩尾根、そして塩見岳というこの景色が今回のお気に入りNo.1になりそうです

派手さはないですが、緑の中に混じる黄葉とそれがどこまででも続く南アルプスならではのスケールの大きな景色

お気に入りになりました


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周りの黄葉に気を取られているうちに、いつのまにかお団子標識の農鳥岳に着きました

本日の五つ目にして最後のピークです

この先は大門沢の下降点まで下り、そこからは宿泊予定の大門沢小屋まで下るだけです
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最後のピーク、農鳥岳からの眺めを十分に満喫して大門沢下降点へと向かいます 

農鳥岳を下り始めてから30分ほどで、大門沢下降点の目印のところまでやってきました
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この景色もここで見納め

ここからは樹林帯に入っていきます

 

大門沢下降点を下り始めてすぐに崩壊地のトラバース

 

下るだけ、

 

なんて考えていたら大間違いのルートでした

崩れかけた脆い岩肌に頼りなさそうなロープがぶらりと一本垂れ下がっています

足場はボロボロと崩れ落ちそうな岩混じりの土

身軽ならヒョイっと行けてしまいそうですが、テント泊の荷物となると勝手が違います

慎重に通過していきます

大門沢ルート自体が激下りのコース

崩壊地から滑り落ちれば、かなり下まで落下していくだろうというのは目に見えてわかります

なんとか無事に崩壊地を通過

その後も片側崩壊した沢沿いの道やザレた急降下の道がたびたび登場し、全く気の抜けないルートです

しかも一歩一歩の段差も大きく、足にもかなり負担がかかります


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徐々に疲れも溜まってきているので休み休み下っていきます

明るい沢沿いの道から樹林帯に入りしばらく下ると、行く先にようやく小屋の屋根らしきものが見えてきました

この日の行程もようやく終わりです

 


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小屋では少し前に抜かしていった2人組の方が宿泊の受付をしていました

少し待ってテントの受付をします

テント場の場所は小屋の奥ほどにあります

テント場には一張りだけテントがありました

テント場は段になっていて、先に張られているテントは下の段

私たちが上段に張ればちょうどお互い干渉しない感じになります

 

沢の近くということもあり、テント場の下草は少し湿り気を帯びていました

無事にテントを張り終え、あとは寝るまでの時間をのんびりと過ごします

 

水場は小屋前とテント場の少し下から出ている湧水

どちらも同じかな、と思い汲みやすい小屋前の水場を利用することにしました

ついでにお手洗いも、と思いトイレ棟に立ち寄ってみるとこれがなかなか衝撃的なトイレ

扉を開けると、そこは板張りになっており、ちょうど和式のトイレのサイズくらいに床板がくり抜かれている、という構造のものです

便器というものはありません

シンプルに言えば床に穴が空いているだけ、というトイレ

紙はありません

電気はないのでヘッドライトが必要です

床板はベニヤ板のような薄さ

上に乗ると少したわむ感じが、

大丈夫なのか?

と心配になります

前回登った剱岳の早月小屋のトイレも最近の山小屋の中ではまあまあのワイルド仕様でしたが、さらにその上をいっています

ワイルドさで言えば、私が体験したなかでは、今はもう無き、以前のババ平のテント場のトイレと一、ニを争えるような感じです

山の中にトイレがあるというだけでもありがたいことなので贅沢は言っていられません

ありがたく使用させていただきました

 

テント場は樹林帯なので特に夕日がみえるとか、そういった楽しみはありません

スマホも圏外なので、夕ご飯を食べてたらサクッと眠りにつくのみです

 

樹林帯で沢沿いのテント場

夜になるとテントライトの灯りに虫たちが引き寄せられてきて、テント越しに何やら色々な虫たちのシルエットが浮かび上がります

そして、外には足の長いクモたちがそこかしこを歩いていました、、、